ヴァイオリンを習い始め、鈴木メソードの教本をやっているのに『鈴木鎮一』について無知である自分を反省し、今さらですが鈴木鎮一さんの著書を読みました。
1966年に定価370円で出版された『愛に生きる 才能は生まれつきではない』です。(現在の価格は798円です)
鈴木さんのヴァイオリンへの目覚めは17歳の時に聴いたミッシャ・エルマン(Mischa Elman)の演奏する『アヴェ・マリア』。
VIVA、ネット世界!
なんと鈴木さんの聴かれたであろう音源がありました!(上記のアヴェ・マリアをぽちるとお聴きいただけます。)
この著書を読む中に『狼にそだてられた子』の話が出てきます。
アメリカの心理学者であり小児科医で子供の発達研究を専門とされていたアーノルド・ゲゼル(Arnold Lucius Gesell)が書いた著書です。
インドで狼に育てられた二人の子供が発見され、人間社会で生活をするのですが、最後まで狼のように振る舞っていたというものです。
100年以上も前の話であり、場所はインドですから、真実に関しては賛否両論があったようですが、実はこの本、信州の祖父母宅の書斎にあり、私は小学5、6年生ぐらいの時に読んだのですが、モノクロ写真で少女が四つん這いで歩く姿が掲載されており、ショックでした。
あの時の衝撃が鈴木さんの著書で蘇りましたが、狼少女の事例を踏まえて、鈴木さんが伝えたかったことは「能力は生まれつきではない」ということ、そして、「環境にないものは育たない(環境に適応して能力は作られる)」ということです。
そして、鈴木さんは「子どもに美しい心を、高い感覚を、りっぱな能力を育てるためにヴァイオリンのおけいこをさせましょう。ヴァイオリンで人間を育てるのです。(鈴木鎮一『愛に生きる』より抜粋)」を方針に鈴木メソードを立ち上げられたのです。
鈴木さんがヴァイオリンを弾き始めたのは少々遅い17歳でしたが、23歳で渡独されたからこそ、粘り強く音楽を学ばれ、そして、指導者としての感性を磨かれていったのだと思います。
相対性理論のアインシュタインとも交流があり、アインシュタインの十八番はバッハの『シャコンヌ』で(※パールマンのシャコンヌ、凄すぎます。。。)、ヴァイオリンの名手であったとも記されています。
アインシュタインが音楽を奏でていることは知らなかったので、ちょっとだけ(あくまでちょっと)親近感を覚えました(笑)
ドイツ留学の中で鈴木さんが「両手を失った」という演奏がありました。
クリングラー・カルテットの演奏したモーツァルトの『クラリネット五重奏曲(イ長調、K581)』。
この時のことをこのように記されています。「なんともいえない崇高な、大きな喜びと感動がわたしの魂を奪っていた。モーツァルトの高い魂の世界を与えてもらった。(鈴木鎮一『愛に生きる』より抜粋)」
この文章を読んで、魂を奪う演奏に私も出会ってみたいと思いました。
そのためには音楽会に足を運ばなくてはなりませんが、音楽会のお値段で感動が得られるものではないと思います。
演奏家がどれだけ作曲家の意図を汲み取り、自分の演奏に反映させられるかが、"人の魂を奪う演奏"に繋がるのではないかと考えます。
ですから、その感動はどこにあるのかわからないのですよね。
これからの演奏会が純粋に楽しみになりました。
さてお次は、鈴木さん愛著『トルストイの日記』を読んでみようと思います♪
追伸:『愛に生きる』に友人の母上のお名前が出てきて、鈴木さんにも親近感を覚えました(笑)